アナール学園

不実なる街の住人「アナール学派」のブログです。

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木のある風景

VFSH0081.jpg

おお、久しぶり。実に久しぶりじゃないか。
何をキョロキョロしてるんだい?
私はここだ…。そうじゃない、目の前だよ。
そう、私はキミの目の前にいる。
ああ、もどかしいね。木だよ、木。
私は木だ。目の前で、キミに日陰をプレゼントしている木だよ。

ああ、来てくれたんだね、嬉しいよ。
ん?何をそんなに驚いているんだい?
ほう…、さては自分がオカシクなってしまったと思っているんだね?
ありもしない声を聞いてしまっていると、木が喋るわけはないと、そう思っているんだね?
まあ、気持ちはわからないでもないよ…。
おやおや、耳に指を突っ込んで…。そうじゃないな。我々木はキミたちのように空気を震わせて会話をするわけじゃない。私は、もっと別な方法でキミに話しかけているんだよ。
え?どうやって?…まあ、説明するのは難しいね。
そうだな…。今、私の葉の一枚にカエルがとまっているだろう?キミにも見えるはずだ。そう、そこだ。
カエルというものは動いているものしか感じることができない。つまり、止まっているものは、彼らにとっては存在しないも同じなんだよ。
それと同じさ。人間にだってそういうところがあるんだよ。我々木にとっては当たり前のようなことが、人間にはわかっていない。
私は、今そういう経路を使って君に話しかけている。それだけのことさ。カエルのために、止まっているものを動かしてやるようなものだよ。
…ああ、やっと落ち着いてくれたね。
そうさ、柔軟な態度というものは何よりの美徳さ。風に逆らわず、それに乗って静かにそよいでいれば枝を折られることもない。
いやいや、どうも説教臭くなってしまったな。
え?ずいぶんとイメージが違う?
そうかい、人間にとって、木とは悠久の時の中、じっと静かにたたずんでいるべきものだからね。よもやベラベラと説教まで垂れられるとは、思ってもいなかったろう。
しかしね、それは誤解だ。我々だって、生きている以上は会話もするし恋もする。知識だって、キミたち人間以上に持っているつもりだ。
私は、ここにずっと立ってはいるが、世界中のことを広く知っているんだよ。
どうやって知るのかって?
いやいや、まさか新聞が毎日運ばれてくるわけじゃないよ。
水さ。今、私が根から吸い上げている水。これが全てを教えてくれるんだ。
水というものは素晴らしい…。形なく、大きさもないから、どんなところにでも存在できる。空にも地面の中にも、もちろん、キミたちの体の中にだって存在することができるんだよ。
そして何より、彼らはあらゆる所を巡ることができる。
空中をたゆったっていたと思えば、花の上を滑り落ちる。地面に集まったと思えば、地中に吸い込まれて消えていく。そして、再び地上に現れては、川となって長い旅をする。
まだまだ終わらないよ。次は海だ。あの広大な海は、全部水なんだからね。当たり前のことだが、よく考えればすごいことだ。
彼らは地球の七割を占める広さを、ゆっくりと巡るんだ。そして、太陽に照らされて舞い上がると雲になって、今度は海よりも広く深い空を巡る。で、雨になって、また地上に帰ってくるというわけさ。
すごいだろ?
我々は、そんな彼らの壮大な旅の記憶を、彼らを根から吸い上げることによって知ることができるんだ。だから、我々木は、大地の一点にいながらにして、何でも知っているんだよ。
ほら、今私が吸い上げている水の一部、これは西方の聖人が処刑されたときに流した血だったものだ。深い悲しみが伝わってくる…。
かと思えば、これは、東方の聖人が断食の後、少女にもらった粗末な粥だったものだ。おお、これはこれは…。どうやら少女は、この聖人に恋をしていたようだね。
これは、悪名高き鉤十字の独裁者の、孤独な涙…。
これは、宇宙の秘密を数式にしたためた物理学者の、焦燥の汗…。
おお…!これは…!おやおや、キミ、そんな歳になって立小便をしたのかい?ずいぶん酔っ払っていたようだね。ふむ、少し胃が悪いのかな?どうやら、精神的な圧迫感が原因のようだな…。
やれやれ、キミたち人間は、足という類まれ無き財産を持っているのに、すぐに一箇所に留まろうとする。その上、自分の神経をすり減らしてまで無意味なことに没頭するんだな。まったく、これだけは理解できんよ。
おっと。はは…。結局は説教になってしまったな。すまん、すまん。私とて、木々の中では青二才に過ぎん。新芽に毛が生えた程度のものなのだ。偉そうなことを言える身分ではないな…。
うむ…。そうだな。本題に移ろうか。
今日来てもらったのは他でもない…
え?呼ばれた覚えは無い?
おやおや、キミは今日、ここに自分の意思で来たと思っているのかね?
確かに、ここはキミにとって通い慣れた場所だ。しかし、それは子供の頃の話だろう?今となっては、こんなところに来ることは珍しいはずだ。
普段は側を通り過ぎるだけの場所、しかし今日はこうやってここまでやって来た。これがどういう意味かわかるかね?
そう、私がキミを呼んだんだよ。
驚くことは無い。こんなことは我々にとっては簡単なことだ。
どうやったかって?ふむ…。君は聞いたはずだ。風が私の葉を揺らす音を…。キミは何も気づかずに、その音を聞いていたようだが、私はそこにメッセージを込めておいたのさ。「こっちに来い、私の前に座れ」とね。そうしたら、キミはフラフラと…。
おいおい、そんなに怖い顔をしないでくれ。大丈夫さ。悪用したりはしないさ。大体、木の価値観を、人間の価値観で測らないでくれたまえ。そんなことをしてどうする?意味の無いことさ。
まあ、人間のキミにとってはこういうことをされるのは不快だったろうね。そこは悪いことをしてしまったと思っているよ。まあ、疑心暗鬼に過ぎるとも思うがね…。
ふう…。いいかな、続けても?
で、こうやってキミを呼んだわけだがね、まず話しておかなければならないことがある。
私はもうすぐ死ぬ。
ん?そうだ…死ぬんだよ。
いや、違うよ。病気じゃない。どうやら、ここに大きなビルが建つらしい。となると、私はひどく邪魔になるらしくてね。バッサリと切り倒されるらしいんだ。
おいおい、今度は神妙な顔かい。キミはすぐ顔色を変えるんだな。胃が悪くなるはずだ。
大丈夫さ。キミに責任があるわけではない。仕方のないことさ。死ぬときは死ぬ。それはキミたち人間だって同じだろう?ジタバタしてもしようが無いさ。
謝ることは無い。これじゃあ、まるで私が恨み言を言うために君を呼んだみたいじゃないか。
その話はもういい、大事な話はここからだ。実は、私の根元に小さな箱が埋まっている。
覚えているかい?キミが小さな頃、友達と一緒に埋めたものだ。
中身はくだらないガラクタばかりだったと思うが、随分と楽しげに埋めていたろう?
なんと!覚えていないのか?…まったく…。
私は、こんなものどうでもよかった。むしろ根は伸びにくかったし、水の回りも悪くなってしまう。根っこを少し伸ばして、ヒョイッと外に押し出してやろうと思ったときもあった。
しかし、ね…できなかった。むしろ、野良犬が獲物を埋めようとしたり、小さな子供が戯れにスコップを振り回したりして、ここを掘り起こそうとするたびに、守ってしまった。妙にざわついてみたり、毛虫をポトリと落としてみたり…。
我ながら理解不能な行動をとってしまったよ。こんなガラクタ、どうでもよかったのだ…。でも、なぜだか放ってはおけなかった…。
まあ、いい…。そういうことも、あるということだ…。
もうすぐ私は死ぬ。そして、この場所もコンクリートで覆われてしまう。そうすれば、この箱は永遠に土の中だ。
キミさえよければ、そうなる前に、この箱を持って帰ってくれないか?
そうか…。もって帰ってくれるか…。
よかった。これで、わざわざキミを呼びつけた甲斐があったというものだ。私も、安心して死ねる。
おいおい、今すぐ掘り出そうとすることはないだろう。せっかちだな。人間というものは本当にせっかちで困る。そのくせ、忘れっぽいのだから、何のために生きているのかまったくわからんよ…。
おやおや、最後も説教になってしまったかな…。
もうすぐ太陽が沈む…。そうすれば私は眠る。掘り出すのは私が眠ってからにしてくれ。
そうだな…。それまで、昔の話をしてほしい。キミが私に登ったり、ぶら下がったりしていたときの話だ。そう、楽しく皆で遊んだときの話…。
それを聞きながら、ゆっくりと眠ることにするよ…。
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  1. 2005/06/13(月) 20:59:07|
  2. アナール小劇場|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:9
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コメント

(;△;)

最初の「おお、久しぶり。実に久しぶりじゃないか。」
を読んだとき、何が久しぶりなんだろ?と思いましたが、こういうことだったんですね。

「水が全てを教えてくれる」
「タイムカプセルをひたすら守り続ける木」
これも良かったです。

正直、感動しますた。
  1. 2005/06/13(月) 21:37:48 |
  2. URL |
  3. 改 #nVoyyyuY
  4. [ 編集]

大木マニアなUSA

樹からは色々なものをいつも頂いてます。
大木を見付けるすぐに抱き着いて声を聴いてます。さすがに最近は昇らないけど・・・
後割り箸しがむのが好きです。
  1. 2005/06/13(月) 23:38:52 |
  2. URL |
  3. (-  _ -) #-
  4. [ 編集]

はじめてカキコ。

アナール学園ちょくちょくコソーリきてます。
そしてひとりで勝手に感動してます。

とってもキレイ。
何がって、あなるさnの世界。
そうか、そうなのか、フフフーン。
またまた妄想。許してちょ。

今度また声かけてみよう。あなるサーン。

ドキドキ。
  1. 2005/06/15(水) 21:48:59 |
  2. URL |
  3. ちょ #-
  4. [ 編集]

どもども!!!

改さん!
この文章の下書きは、実際に、小さな頃によく遊んだ公園で書きました。
思い切り変な目で見られましたが、結構シミジミとできました。
その時の感動を共有していただけたのなら、すごく嬉しいです。

(-  _ -) さん!
大木マニアですかw
確かに、木には人を捕らえて離さない魅力がありますね。
樹齢何千年、とかいう木が日本にもあるそうですが、ぜひ、「お話」してみたいものです。
あと、僕は爪楊枝をしがむのが好きですw

ちょさん!
おお、まさか、あなたまで学園を見ていただいてるとは!すごく光栄です!
ちょさんのおかげで、PRO街では楽しく過ごさせていただきました(もし同名の別人の方でしたらすいません)。
センセもお元気にされてますか?
キレイ、といっていただくなんてすごく照れます(*ノёノ)
自由に妄想してくださいねw
BARギコの私は、ほろ酔いでちょっとHですが、懲りずにまた声をかけてくださいねw
また会える日を楽しみにしています!


  1. 2005/06/17(金) 03:25:39 |
  2. URL |
  3. アナール学派 #-
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2005/06/25(土) 15:37:47 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

なんですかこの感動大作は!!!
木登りして遊んでた近所の木々を思い出しました (´;ω;`)
覚えてるかなぁ・・・・?  俺の事・・・・
  1. 2005/06/27(月) 03:08:46 |
  2. URL |
  3. CIBER #-
  4. [ 編集]

どもども!

私は自然派悪ガキだったので、木にイタズラばかりしていたような気がします。
覚えていられると、仕返しされそうな気がw

それにしても近所の木がどんどん減ってます。
下校途中にかいだキンモクセイの香り、懐かしいなぁ・・・ 
  1. 2005/06/30(木) 01:15:55 |
  2. URL |
  3. アナール学派 #-
  4. [ 編集]

そういえば、近所のお寺に「ゴジラの木」(タナカだけがそう呼んでいたw)というのがありました。
近くで見る分にはただの大きな木でしかなかったけれど
2階にある私の部屋の窓から見えるその姿は
ゴジラの姿そのものでした。(ゴジラを横から見た感じ?ww)

書き込みを読んで思い出し、
本当に久しぶりに窓からゴジラの姿を探しました。
でもそこにいるはずのゴジラはもういませんでした。
父が窓用のエアコンを取り付けてくれてから
半分しか開かなくなった窓。
もうずっとそこから外を見てなかったんだ・・・・。
物心ついてからずっと見てきたゴジラは
私のしらない間にいなくなってました。
・・・実は、幼いタナカはゴジラのことをずっと怖がってました。
だからもしかしたら、
彼は旅立つその日も私に黙って行ってしまったのかもしれない。
なんて水くさいんだろう・・・
大人になったタナカはゴジラが好きだったと伝えたかったのに。
・・・・ちょっと涙。


  1. 2005/07/01(金) 21:30:58 |
  2. URL |
  3. タナカ #-
  4. [ 編集]

どもども!

ゴジラくん…(;ё;)
でも、きっとゴジラくんは、姿をかえてミカエルさんのことを見守ってくれていますよ。
気持ちのいい木漏れ日を感じたなら、それはきっとゴジラくんからのプレゼントです。

北欧の神話では、世界は一本の大木(ユグドラシル)によって支えられているといいます。
丸い地球を知っている私たちには、もうそれはおとぎ話でしかないけれど、私たちのもう一つの世界である「心」は、いまでも木に支えられているのかもしれませんね。
  1. 2005/07/02(土) 22:28:04 |
  2. URL |
  3. アナール学派 #-
  4. [ 編集]

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